JOY: 奇跡が生まれたとき
2024-11-27


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たまたまネットフリックスで新作が出てきたので観た。映画館でも上映してほしいほどの良いドラマだ。イギリス映画は演出による刺激は少ないが落ち着いていてじっくり見せるところが好きだ。同じ風景の田舎を走っていく列車や自動車を上空から俯瞰する映像が何度か出てくると、英国映画の定番だなぁと感じさせる。50年前のイギリスを舞台に世界初の体外受精の舞台裏を題材にした実録もので、研究者と産婦人科医とそれを支える看護婦(発生学者)の3人が不妊に悩む人々を救おうとさまざまな困難を乗り越えながら画期的な医療技術の実現に挑む。神をも恐れぬ体外受精という偏見に耐えながら、子どもが欲しい家族のために人生を賭ける3人のそれぞれの人生を落とし込みながらドラマは展開していく。50年も前なのに黒人の研究や看護婦がそこら中に出てくるのは最近のポリコレ志向なのか、不妊の患者にも黒人が少なからずいて違和感があった。資料によれば70年代の黒人比率は2%程度らしい。

主人公のジーン・パーディ看護婦(発生学者)を演じるトーマシン・マッケンジーはまだ23歳の女優だがが演技が素晴らしい。自分は重度の子宮内膜症で子宮に受精卵を着床させる望みがない。自分の出産は無理でも着床可能性のある女性たちの不妊治療を実現させようと、中傷や資金難で何度もくじけそうになる医師らを励ます。実話ではパトリック・ステップトー医師とノーベル賞を受賞したロバート・エドワーズ博士が有名だが、主人公であるジーン・パーディ看護婦(発生学者)のことは良く知られていないことがこのドラマの制作動機だ。当時は『女性科学者』というと、現代と比べるとほとんど評価されることがなく、体外受精技術の確立における彼女の役割や貢献が認識されていなかった。彼女の功績は表に出ることは無く、1985年に39歳という若さで悪性黒色腫によって亡くなっている。オールダム市議会は、「パーディの功績が無視されることになったのは、当時の偏った制度や意向、組織的あるいは性別的な差別が根底にあった」ことを認め2022年に彼女の名前が刻まれた新しい記念碑が、ロイヤル・オールダム総合病院に建てらたという。彼女らの成果で現在までに1000万人を超える体外受精児が世界で出産されたという。彼女の功績をいち早くドラマにしたネットフリックスに拍手を送りたい。
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