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洋画といえば、アクションものの「ミッション:インポッシブル(MI)」は欠かさず見ている。今回の上映時間はほぼ3時間。トイレが持つかと心配したが、圧倒的なアクションに引き付けられ、事なきを得た。イラン・イスラエル間で緊張が高まる今、現実の核兵器開発問題が報じられていることもあり、作中のスケール感に不思議なリアリティを感じた。最後の試練は、ロシアが開発したAIの暴走を利用して核戦争へ導こうとする野望を阻止するという、前作からの続きである。シリーズ全体の伏線を回収するような筋書きになっており、過去作の流れを覚えていれば、もっと楽しめたかもしれない。1996年から続くスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作である今回は、前作『デッドレコニング』との2部作であり、イーサン・ハントの過去や運命に迫る物語だ。世界の命運を握る鍵を手にしたイーサンが、壮大な任務に挑む姿を描いており、トム・クルーズ自らが挑む空中スタントも見どころ。サイモン・ペッグやヴィング・レイムスらおなじみの仲間に加え、ヘイリー・アトウェルら前作の新キャストも続投。監督はシリーズ常連のクリストファー・マッカリーが担当している。まさにシリーズの集大成とも言える作品だ。トム・クルーズは30年間この作品に取り組んでいるが、映画の中での彼の肉体は衰えを知らない。ただ、首筋の老化はさすがに隠せず、62歳なのだとあらためて思い知らされた。22歳のとき『トップガン』で一躍有名になり、28歳からこの作品に取り組んできた彼のバイタリティは本当にすごい。
当時、スパイものといえば007シリーズが圧倒的な人気を誇っていたが、「ミッション:インポッシブル」がそのお株を奪った感がある。「ミッション:インポッシブル」と「007」シリーズの違いは、両者のスパイ像や演出スタイルに、ヨーロピアンスタイルとアメリカンスタイルの違いが見て取れる。007シリーズは、英国MI6のエリートスパイであるジェームズ・ボンドが主人公。スタイリッシュなスーツ姿、高級車やガジェット、単独行動が特徴であり、任務は上司との対面で伝えられる。一方、「ミッション:インポッシブル」は、アメリカの極秘組織IMF(Impossible Mission Force)に所属するイーサン・ハントが主人公。チームでの連携、リアルなアクション、そしてトム・クルーズ本人によるスタントが魅力である。任務は「このメッセージは5秒後に消滅する」という名セリフとともに伝えられる。
007が「英国紳士の孤高のスパイ」だとすれば、MIは「命知らずのチーム型スパイ」。それぞれに異なる魅力がある。ちなみに、MI6は実在する組織だが、IMFはCIAの下部組織という設定であり、任務は「政府が関与を否定できる」レベルの極秘作戦ばかり。指令の「このメッセージは5秒後に消滅する」というセリフは、1960年代のテレビドラマ『スパイ大作戦』から続いている。そして、あの定番のテーマ曲が流れると、今でもわくわくしてしまうのは、ずっと変わらずこの映画の最大の魅力のひとつだ。たぶんこれでシリーズは幕を閉じるのだろう。あまり長々とやってもインディージョーンズの二の舞になるのでここらで余韻を残して終了するのが良いかもしれない。トムお疲れさまでした。