降圧剤副作用か?自動車事故
2025-07-01


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高齢ドライバーによる交通事故が増加している。これまで「年齢のせい」と片付けられてきたが、薬の副作用が関係している可能性がある。特に注目されているのが、血圧を下げる薬、いわゆる「降圧剤」である。めまいやふらつき、注意力の低下などの副作用が運転に影響し、事故のリスクを高めているかもしれない。実際、降圧剤が関わると思われる事故が報告されている。大阪市では69歳の男性が交差点で歩行者をはねた。男性は血圧の薬を服用し、「最近ふらつきが増えていた」と話している。福岡市では67歳の女性がスーパーの駐車場で誤って車を突っ込み、複数の薬を服用していた。神奈川県では70歳の男性が一方通行を逆走し、複数の降圧剤を使用していたことが明らかとなっている。

降圧剤は血圧を下げて心臓や血管の負担を軽減する薬である。しかし、急激に血圧を下げすぎると、脳への血流が不足し、ふらつきや立ちくらみを引き起こすことがある。高齢者は薬の影響を受けやすく、視力やバランス感覚の衰えも重なるため、些細なミスが重大事故につながりやすい。こうした降圧剤の使用増加には、高血圧学会の治療ガイドラインの変遷が大きく影響している。かつては140/90mmHgを超えたら積極的に治療するのが一般的であったが、2014年に130/80mmHg以上でも治療対象とされ、対象患者が大幅に増えた。その後、高齢者には慎重な治療を推奨する方向に修正されたものの、処方数は増え続けている。

降圧剤の売り上げはこの20年でほぼ倍増し、日本国内の市場規模は2000年の約280億円から2020年代には約520億円に達した。しかし、この急激な使用拡大に伴い、主要な心疾患や脳卒中の死亡率、再入院率が劇的に改善したという統計的な裏付けは乏しい。むしろ副作用による転倒や入院が増えており、薬の効果とリスクのバランスが問われている。さらに、製薬会社が医師や学会に資金提供を行い自社薬の推進を図る一方で、診療報酬制度が薬の処方量を増やすインセンティブとなっているため、医療機関は薬を多く処方する傾向にある。こうした制度的な背景も、市場拡大の一因とされている。

一方、イギリスの大規模研究「OPTiMISE試験」では、80歳以上の高齢者を対象に、降圧剤を減らしたグループと継続したグループを比較した。その結果、死亡率に有意差はなく、薬を減らした方が転倒や入院の発生率が低下したことが明らかになっている。これは、血圧を無理に下げるより、自然な体の状態を保つ方が安全である場合があることを示唆するものである。この知見は、加齢による生理機能の変化が始まる前期高齢者(65〓74歳)にも十分当てはまる可能性がある。特に薬の副作用や過度な降圧による脳血流低下は、年齢を問わず注意が必要であり、年齢で一律に治療方針を分けるのではなく、個々の体調や生活状況に応じた柔軟な薬剤管理が求められている。

それでも現実には減薬は進んでいない。事故を「年のせい」と済ませる社会の仕組みが続いているのである。薬は命を守るが、誤った使い方は命を脅かすことにもなる。事故を減らすには、「この薬は本当に必要か」「副作用は出ていないか」を社会全体で問い、現行の「一律に高齢者に運転免許返納を求める」方式から、「降圧剤を服用している人は運転を控えるべき」とする明確な基準や法整備への転換が望まれる。これにより、副作用リスクを踏まえた合理的な運転管理が可能となるだろう。事故の裏にある真実に目を向けること。それが高齢者事故の本質に迫る第一歩になると考える。
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