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内閣府が発表した2023年の国民経済計算によれば、日本の1人あたり名目GDPは3万3849ドルであり、前年の3万4112ドルから減少した。韓国(3万5563ドル)に逆転され、OECD加盟国中22位、G7中ではイタリアを下回り2年連続で最下位である。円安や高齢化による成長力の低下、労働生産性の低さが主な原因とされる。名目GDP総額は4兆2137億ドルであり、ドイツに初めて抜かれた。また、2024年には台湾にも1人あたり名目GDPで抜かれる見通しである。メディアは、日本の時間あたり労働生産性がOECD加盟国中29位と低いことを指摘し、デジタルトランスフォーメーション(DX)やリスキリングの推進が必要であると論じている。また、高齢化による労働力供給や家計所得向上の課題を挙げ、バブル世代の高齢化に伴う制度改革の必要性を示唆している。しかし、これらの議論には疑問もある。1人あたり名目GDPは名目GDPを人口で割る指標であるため、GDPが増加すれば人口が一定であれば自然に上昇する。同様に、労働生産性(GDP ÷ 総労働者数)もGDPの変化に左右されるため、「生産性が低いからGDPが伸びない」のか、「GDPが変わらないから生産性が伸びない」のかという鶏卵論争に陥りがちである。実際、40年前の日本のバブル期においても、生産性が特段高かったわけではない。
結局のところ、各国のGDP伸び率に符合する要因を探ることが重要である。その中で最も符合するデータは政府総支出の比較である。1997年を基準とした場合、2022年の日本の政府総支出は1.3倍にとどまり、アジア諸国の中で最も低い増加率である。一方、中国やインドは20倍以上、韓国は8.0倍に拡大し、G7諸国も2倍以上増加している。日本は「放漫財政」とされる一方で、実際には過度な緊縮財政を続けており、橋本政権以降、小泉・安倍政権を経ても政策の方向性は変わらなかった。景気が悪化すると民間の支出が減り、需要が縮小する。先進国では政府が支出を増やして経済を下支えするのが一般的である。しかし日本は、需要不足に対応せず、政府支出を増やさなかった結果、GDP、家計消費、平均年収、物価の伸び率が世界最低水準にとどまっている。つまり、日本の役人と政治家の失策が30年近くGDPや1人あたりGDP、労働生産性、個人所得を低迷させた主因である。それにもかかわらず、メディアは民間の努力不足ばかりを強調し、政府の引き締め経済政策の失敗を正面から取り上げない。政争ばかりを報じ、経済的失策を指摘しないメディアの責任も大きいと言わざるを得ない。